
kokoimaの始まりとなったきっかけ
kokoima設立のきっかけとなったのは、浅香山病院の中で2012年に行われた写真展でした。
2012年8月、雑誌『精神科看護』の企画でカメラマンの大西暢夫さんが写真撮影に来られていました。その時に病院で、入院患者のみなさんをはじめ、スタッフや病院内の様子など約500の写真を撮影されていました。それを見せてもらって
「よい写真は人を刺激し、元気にさせる力がある」
と強く感じました。その写真には、入院患者さんの、看護師がケアをしている時とは違った、見たことがない顔(表情)が写っていました。そしてカメラを向ける眼差しも、さりげなく向けられたもの、じーっと見つめてくるもの、どれも私達が尊重されていることが伝わるものでした。
この写真、そしてこの瞬間に起こっていることを「自分たちだけが見るのはもったいない」という衝動が湧き、写真展の開催に至りました。

その呼びかけに、患者さん9名、職員13名の計22人が集まり、タイトルを考えたり、写真の選定、展示方法、スケジュールなどを話し合いながら2ヶ月をかけて開催までこぎつけ、3日間で延べ494名(院内419名、院外75名)の方が来場してくださいました。

この写真展の大きな特徴は、「現在の自分の姿と思いを感じ取ってほしい」という希望から、被写体となった患者さんが実名で出られていたり、また本人が写真の横に座って直接解説をするという風変わりなものでした。
そんな中で特徴的だったのは、患者さんたちは自ら名刺を作ったり、渡す練習を何度も行ったり、見てくれる人に楽しんでもらおうという行動が目立ったことです。

この写真展では、日常的な院内での様子とは全く違った患者さんたちの生き生きとした姿がそこにありました。写真展を成功させた原動力というか、入院患者のみなさんを突き動かしていたものはなんだったのか。それを聞いて出てきた言葉は
「社会貢献したい、誰かの役に立ちたい」
という言葉でした。20〜30年と入院生活を送られている人もいる中で出てきたこの言葉に、「必要なケアとは一体なんなのか」という根源的な問いが突きつけられるような思いでした。
この写真展は好評を得て、別の病院や大学など、様々な場所での出張開催なども行われるようになっていきました。
そこからの葛藤
写真展は入院患者さんからも、来場者からも非常に評判がよいものでした。
しかしながら、ある葛藤が生まれます。当日は会場で豊かなコミュニケーションを展開し、心地よい疲労とともに「家路」に着く。入院患者さんは精神科病院のベッドに、スタッフや来場者の方は自宅へ。3年ほど展覧会を続ける中で、この変わることのない事実に苦しみました。
写真展の準備から当日まで、真剣になっている入院患者さんを見るたびに、日常生活を送れる力を持っている。と強く思いました。しかし、入院が長期になっている人ほど、退院することを諦めてしまっていたり、また隊員してもひとりで暮らすことに孤独・孤立を感じてしまうことが、「退院する勇気」の阻害要因になっているのではないか。病院の中ではなく、「まちの中」に安心できる居場所が必要なんじゃないか。
そんな思いが強くなっていき、2015年12月にNPO法人kokoimaを設立し、翌月12月にcafeここいまがオープンしました。
